2008年12月26日 [学会からのお知らせ]
国見会長退任挨拶
会長退任にあたって
多くの懸案事項を抱えての出発でしたが、この間、常任評議会、評議会、各種委員会、事務局の皆様からの絶大なご協力をいただき、何とかゴールにたどり着くことができました。まずは、ご協力いただきました皆様に心より感謝申し上げます。
会長就任にあたり今期執行部の取り組む課題として、(1)学会改革の定着とさらなる発展、(2)財政の改善、(3)会員の意識向上、(4)社会貢献 を挙げました。これらの項目については、前期の執行部でも検討されましたが、今期の執行部では、前期執行部で解決できなかった問題を中心に検討することをお約束しました。常任評議会での闊達な議論を通して、これらの問題について真剣に取り組んできました。今期の執行部での具体的な検討状況について総括したいと思います。
(1) 学会改革の定着とさらなる発展
今期執行部で取り組んだ最も大きな課題は、会員制度の改定でした。これまで、本学会では和文誌を購読するA会員と和文誌と英文誌を購読するB会員が存在していましたが、これを正会員として一本化することにしました。現在、Applied Entomology and Zoology誌は、J-Stageで公開しているため、発行3ヶ月後には誰でも論文にアクセスすることができますので、B会員としてのメリットが消失していました。このことを解消することと後述する財政健全化の一環として、会員制度の改定を行いました。一方、学会会計の透明性を確保するために、公益法人会計基準に準拠した会計システムと外部監査を導入しました。具体的には、基金取扱規定と国際交流運用規定を改訂し、特別会計を一般会計の固定資産に移す手続きをとりました。
学会誌の改革については、常任評議会でたくさんの議論が展開されましたが、具体的な施策としてとりまとめることができませんでした。特に、和文誌をより魅力的な雑誌にするためには、根本的な編集方針の改訂が必要であるとの結論に到達しましたが、具体案については成案を得ることができず、次期執行部に検討を委ねました。また、学会大会を若い会員により魅力的なものとするために、執行部企画によるシンポジウム等を開催することが望ましいとの結論に達しました。2010年度の千葉大会で執行部企画が実行できるよう、次期執行部に引き継ぎました。
(2) 財政の改善
本学会では、これまでの執行部と事務局の方のたゆまぬ努力により、1984年以来会費の値上げを行わずに運営してきましたが、ここ数年、単年度ベースで赤字の状態が続いていました。特に、2008年度からは、科学研究費出版補助金が取得できなくなったことから、大幅な赤字会計となっています。常任評議会での論議の結果、安定的に学会を運営するためには、会費の値上げを断行するしかないとの結論に達しました。学会の運営に必要な費用は、全ての会員が均等に負担するとの考えに基づき、前述したように会員制度を1本化し、会費を1万円とすることにしました。今回の会費の値上げは、単にこれまでの学会活動を維持するためでなく、本学会の活動をより魅力的にするため行う活動(例えば、後述する会員情報サービスシステムの導入など)の財政的な裏付けともなるものです。会員の皆様に負担増をお願いする結果になってしましましたが、本会の会計の現状を是非ご理解いただけたらと思います。
(3) 会員の意識向上
電子広報委員会が中心となり、学会ウェブサイトの充実が図られました。2007年12月5日から会員情報サービスシステムをリリースしました。長らく会員名簿が発行できずに会員の皆様には、ご不便をおかけしていましたが、会員情報サービスシステムを利用することにより、会員情報の提供が可能となりました。一方、リアルタイムで会員への情報を提供するため、ウェブサイトでの「学会からのお知らせ」を掲示するとともに、お知らせメール(102~197号)を配信しました。執行部としては、会員への積極的な情報提供に努めたつもりですが、これらの情報を閲覧してくれている会員が少ないのが現状です。また、本学会では、役員選挙の投票率を上昇させることが懸案となっていましたが、今回の選挙で投票率を前回より数パーセント上昇させることができましたが、未だに20%前後と、低い状況が続いています。まだまだ意識向上への取り組みが不足しているといわざるを得ませんが、具体的な方策が立てられずにいるのが現状です。
(4) 社会貢献
社会貢献については、これまで本学会は積極的な取り組みを行ってきませんでしたが、昨今の理科離れ現象や昆虫採集をする青少年の減少などを考えますと、これら青少年に対して昆虫学研究の魅力を学会として積極的に発信することが重要と考えています。そこで、今執行部では、応用動物昆虫学ポータルサイト「むしむしコラム・おーどーこん」を立ち上げました。「むしむしコラム・おーどーこん」は、コラム、昆虫学Q&A、最新のトピック、基礎の昆虫学(現在準備中)から構成されています。コラムや最新のトピックでは、昆虫にまつわる興味深い現象が、平易な文章で解説されています。また、昆虫学Q&Aでは、投稿された昆虫に関する様々な疑問に、専門分野の会員が平易に回答しています。「むしむしコラム・おーどーこん」へのアクセスは、多い日には数百件にも及んでいますので、さらなる充実を図り、昆虫学研究の魅力を学会として積極的に発信していくことが重要と思います。
2006年に学術会議生産農学委員会の基に、「応用昆虫学分科会」が設立され、我が国における応用昆虫学の今後の在り方についての議論が始まりました。2008年5月16日には、分科会主催のシンポジウム「昆虫科学が拓く世界―研究者の再結集を目指して―」が学術会議講堂で開催され、日本の昆虫研究者のコミュニティーの再構築の契機となりました。本シンポジウムの成果としては、わが国の昆虫学関連学協会の連携強化策として「日本昆虫学連合(仮称)」を設立する方向性が確認されました。現在、準備委員会を立ち上げ、「日本昆虫学連合(仮称)」の設立に向けた取り組みを行っているところです。今後はこの組織も活用し、わが国の応用昆虫学の発展に寄与することが重要であると考えています。
非力な会長でしたが、強力な執行部と事務局に支えられ、大過なく会長職を果たすことができました。ご協力いただきました執行部と事務局の皆様に心より御礼申し上げます。日本応用動物昆虫学会の今後の益々の発展を祈念して、退任の挨拶とさせていただきます。
(2007-2008年度日本応用動物昆虫学会会長 国見 裕久)