【書評】寄生虫のはなし ―この素晴らしき,虫だらけの世界―
(2021年1月14日公開)
基本情報
- 書誌名:
- 寄生虫のはなし ―この素晴らしき,虫だらけの世界―
- 著者・編者:
- 永宗 喜三郎・脇 司・常磐俊大・島野智之 編著
- 出版日:
- 2020年10月1日
- 出版社:
- 朝倉書店
- 総ページ数:
- 168
- ISBN:
- 978-4-254-17174-7
- 定価:
- 3,000円 (税別)
かわいらしいイラストの表紙に,「この素晴らしき,虫だらけの世界」のサブタイトル.「まえがき」と「第1章 寄生虫ってなに?」でも,寄生虫の面白さが精いっぱい強調されているけれど.やっぱり怖いぞ! 寄生虫.
第2章を見ていくと,「食にまつわる寄生虫」「身の回りの動物とかかわる寄生虫」「途上国や旅先で出会う寄生虫」といった見出しが並ぶ.どれも他人事じゃない.生肉も土も,川の水も犬や猫も,みんなヤバいではないか.学食でこの本を読んでいた私は,思わず肉が生焼けではなかろうかと心配になり,添えてあったスパゲティーが何やら長細い生物に見えてきた.そういえば,このあいだ子供と川で遊んだあと手を洗ったっけかなあと,お尻の辺りが妙にむず痒いような気がしてくる.これだけいろいろな寄生虫がいて,これだけいろんな経路で体内に侵入して,これだけどこにでもいるんだったら,私も1つぐらいすでに感染していてもおかしくない気がしてくる.
さらに追い打ちをかけるように,国立感染症研究所や医学部の先生が病態や死亡例を淡々と紹介し,さいごに「まだ誰も知られていない病原寄生虫が,あなたのそばにひっそり生息しているかもしれない」(P135)なんて言うんだから,えっ! と思わず振り返るレベルの怖さである.
確かに寄生虫の生きざまは,ワンダー(素晴らしい)である.ワンダーの中のホラー.ホラーの中にワンダーが共生している(本書によれば寄生と共生は,関係性によって変化するので広い意味での共生ということになるらしい).本書は表紙やまえがきのソフトさとの中身の怖さのギャップを面白がりながら,楽しく読めた一冊であった.ぜひ,皆さんにもお昼休みに学食で読むことをお勧めしたい.
なお,本書は以下のような構成となっている.
- 第1章 寄生虫ってなに?
- 1.1 寄生とはなにか?
- 1.2 寄生虫とはなにか?
- 1.3 日本に寄生虫はいるの?
- 1.4 海外旅行へ行くとき気をつけないといけないのはどんな寄生虫?
- 1.5 寄生虫はどんな生活をしているの?
- 1.6 寄生虫はどうやって宿主や寄生場所を決めているの?
- 1.7 寄生虫という生き方(生物学的)
- 第2章 さまざまな寄生虫
- 2.1 食にまつわる寄生虫
- 2.2 身の回りの環境にいる寄生虫
- 2.3 身の回りの動物とかかわる寄生虫
- 2.4 途上国や旅先で出会う寄生虫
- 2.5 役に立つ(ことになるかもしれない)寄生虫