河合学会長退任挨拶
(2013年4月 2日公開)
会長退任に当たって
多くの懸案事項を抱えてのスタートであり、任期中も大きな出来事もありましたが、この間、常任評議員会、評議員会、各種委員会、事務局の皆様、および会員各位からの絶大なご協力をいただき、何とか任期を全うすることができました。まずは。ご協力いただきました皆様に心より感謝申し上げます。
任期中の最大の出来事として、就任直後の2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震及びそれに引き続く、津波と福島第一原子力発電所の事故があげられます。東北地方を中心に、きわめて大きな被害が発生しました。被災された方々に対し、再度、心からお見舞いを申し上げます。本学会も大きな影響を受けました。第55回大会が3月27日~29日に九州大学で開催を予定していましたので、地震発生を受け、大会事務局と連絡をとりながら、常任評議員会で当初は開催の方向で検討しましたが、被害の拡大、交通機関の乱れ、会員の安全確保などを総合的に判断し、3月16日に残念ながら開催中止の判断をしました。大会の中止は本学会にとって初めてのことであり、評議員会はメール会議で、総会はメール及び文書会議で議案の承認をいただきました。また、7月に三重大学で学会賞及び奨励賞の授与式、並びに名誉会員推挙状の授与式を行いました。
また、会長就任にあたり今期執行部の課題として、前期執行部に引き続き、(1)学会改革の定着とさらなる発展、(2)昆虫科学の発展、(3)会員の意識向上の3項目を中心課題として、取り組んでいきたいと考えました。
学会改革の定着とさらなる発展では、前期執行部の大きな努力によりApplied Entomology and Zoology誌は2011年よりSpringer社から出版されるようになりました。これは、世界に向けて効率的な情報発信を行う雑誌とし、Impact Factorも国際的レベルに高めることを目指したものです。今期からは常任評議員1名を「会誌」担当とし、編集委員長とともに、優秀な総説の掲載等、内容の充実を目指して努力しました。幸いにも2011年のImpact Factorは1.14と初めて1を越えました。今後も、努力を重ねApplied Entomology and Zoology誌を国際一流紙に向けてさらに発展させることが必要です。会員の皆様にもApplied Entomology and Zoology誌に掲載された論文を積極的に引用していただきたいと思います。また、日本応用動物昆虫学会誌は、近年、やや停滞傾向にあります。現場に密着した雑誌として、さらに発展させていくため、57巻1号から総説「シリーズ、地域の害虫研究最前線」を開始しました。今後も、わが国における応用動物昆虫学の基盤雑誌、現場に役立つ雑誌として、発展させる努力が必要です。
役員の任期はこれまで1月~12月でした。しかし、本学会の最大の行事である大会はほぼ3月に開かれるようになり、大会の準備の途中で役員が交代していました。そのため、役員任期を大会終了後の4月~3月に変更し、大会の運営に責任を持てるようにしました。また、今期から常任評議員1名を「企画」担当とし、大会におけるシンポジウムの強化等を行いました。また、本年度の大会において、初めて会場内に託児施設を開設しました。さらに、経費削減とともに、投票率の向上に有益と考え、役員選挙に電子投票システムを導入することとしました。今後とも、時代に即応したフォーカスをより鮮明にし、若い世代に対しても一層の求心力を持つ学会にしていくことが重要です。
昆虫科学の発展では、昆虫学関連の学協会のゆるい連合組織である『日本昆虫科学連合』が、設立2年半を経過しました。日本応用動物昆虫学会は、設立時から中心的役割を果たし、昨年、藤崎憲治前会長が第2代の代表に就任しました。本連合は学術社会や一般社会における昆虫科学の認知度を高める上で重要な役割を果たすものと期待されます。今後、他の関連学会と連携しながら、本連合の本格的活動を進めていくべきであると考えています。
会員の意識向上では、これまでと同様に、学会ウェブサイトの改善、お知らせメールの発信、等、電子広報委員会を中心に進めて来ました。今後もこれらをさらに進め、執行部と会員との一層の意思疎通を図っていくことが重要と考えています。
非力な会長でしたが、強力な執行部と事務局に支えられながら、大過なく会長職を勤め上げることができました。日本応用動物昆虫学会の今後のますますの発展を祈念して、退任の挨拶とさせていただきます。
(2011-2012会長 河合 章)