日本学術会議提言「生物多様性条約及び名古屋議定書におけるデジタル配列情報の取り扱い」の国外研究者への発信についてのお願い
(2018年2月27日公開)
この度、日本学術会議の遺伝資源分科会と農学分野における名古屋議定書関連検討分科会は、合同で提言「生物多様性条約及び名古屋議場所におけるデジタル配列情報の取り扱い」を発出いたしました。2017年8月、日本は生物多様性条約の遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を目的とする名古屋議定書の締約国となりましたが、現在、関連する国際会議では、生物多様性条約や名古屋議定書の適用範囲に塩基配列情報などのデジタル配列情報を含めるべきという議論が始まっています。塩基配列情報を従来の遺伝資源と同様に取り扱うようになれば、日本DNAデータバンク(DDBJ)等の塩基配列情報の公共データベースへのデータ登録や利用に承認や許可を得る手続きが必要になります。これまで、誰でも自由にアクセス、利用できることで生命科学の最も重要な研究基盤として機能してきた公共データベースに深刻な影響が及ぶ恐れがあります。また、資源利用国のみならず、資源提供国の多数の研究者も公共データベースを利用しているため、デジタル情報への規制は資源提供国の科学の発展にとってもマイナスです。今回の提言では、以上の懸念から、デジタル配列情報の取り扱いについて慎重に検討することを求めています。
これまで、生物多様性条約や名古屋議定書の関連国際会議には、主に条約締結国の政府職員が参加しており、資源提供国のみならず利用国においても、科学者が深く関わってきませんでした。今回の提言の中で、私たちは、世界中の科学者がこの問題の議論に加わるべきであるという点を強く主張しています。そこで、貴学会の会員におかれましては、この提言(英訳版)を資源提供国や利用国の研究者に送って頂き、この問題の存在を広く周知して頂くようにお願いする次第です。特に、アジア、アフリカ、南米等の資源提供国の研究者で交流を持っている方がおられる場合には、ぜひ、この提言を通知・伝播して頂くよう、心よりお願い申し上げます。
今回の提言のPDFは、以下からダウンロードできます。
尚、貴学会の会員がこの提言を国外に発信された場合には、ご面倒でも、城石(遺伝資源分科会委員長)、または大杉(農学分野における名古屋議定書関連検討分科会委員長)まで、ご一報頂けると大変ありがたいです。本提言の活用状況を把握するに当たって参考にしたいと考えております。
連絡先:
城石 tshirois(at)nig.ac.jp
大杉 r.ohsugi(at)gmail.com
(@は(at)に変えてあります)