応動昆、持続可能な社会を目指して: 一般社団法人 日本応用動物昆虫学会

書評 蜂の奇妙な生物学 (生物ミステリー)

(2023年10月17日公開)

基本情報

書誌名:
蜂の奇妙な生物学 (生物ミステリー)
著者・編者:
光畑雅宏 著 coco 絵
出版日:
2023年7月22日
出版社:
技術評論社
総ページ数:
272
ISBN:
978-4-297-13587-4
定価:
2,640円(税込)

コウチュウ目,チョウ目,ハエ目と並んで種数が多いハチ目昆虫,その種数は全世界で約15万種,日本でも約4,600種が分布している.ハチは誰でも知っている昆虫であり身近な存在であるが,我々は彼らについてどのくらい分かっているだろうか?

本書はそんなハチたちについて,83種の様々な生態や習性等について解説した本である.その内容は,ハチの基礎知識(第1章),ハチの巣(第2章),ハチの恵み(第3章),ミツバチの世界(第4章),ハチの面白習性(第5章),植物とハチの関係(第6章),ハチに関わる生きもの(第7章),外国産のハチ(第8章)と多岐にわたり,実に興味深い話が巧妙な語り口で,各1ページと簡潔にまとめられている.さらに見開きの対となる1ページにはcocoさんによるイラストが掲載され,これが視覚的に大きなインパクトとなっており読者の理解を助けている.一話完結的な構成なので,どこからでも読み始めることができるのも本書の特徴である.セイヨウオオマルハナバチのような外来種や本会員の関心も高い寄生蜂等の話題などに加え,2022年に新種記載されたオウカンヒゲナガハナバチなど最新の知見も含まれている.

本書の最後に掲載されている五箇公一,小野正人,横井智之,大野ゆかり各氏による「特別寄稿」は,それぞれの立場からハチに関する問題や研究を熱く語っており,本書に学術的なアクセントを加えている.このように本書は単なるハチの解説本にとどまらず,「ハチ学入門」的な内容を有しているといえよう.

最近著者と昆虫撮影をご一緒する機会が多いが,潜んでいる昆虫を探し出す能力や,優れた観察眼に感心することが多い.こうした日頃からの観察力,そして生きものに対する真摯な眼差しが本書を生き生きとした興味深い内容に高めているのだろう.著者と私は,指導教員(佐々木正己名誉会員)から,「昆虫撮影は,単にその昆虫を撮るだけではつまらない,行動的に意味がある写真を撮りなさい」と厳しく?指導された同窓生であるが,巻頭などに掲載されている著者による生態写真は,ハチ愛に溢れると共にその教えを実践しており,見応えがある.

紙面の関係上,引用文献が掲載されていないのは残念ではあるが,巻末には参考図書が数多く紹介されているので,本書を読んでハチに興味を持ち,さらに深く学びたい読者へのガイド本的な役割も果たしている.

本書は一般向けとされているが,様々なハチたちの生態や習性,それに関わる生物たちとなれば,本会員でも明るくない方が多いであろう.知識を高める以外に,研究のヒントや講義等にも参考になる本として,是非一読をお勧めしたい.

野村 昌史 (千葉大学大学院園芸学研究院)