下記の通り、第60回蟲セミナーを開催します。
今回はUSAミネソタ大学のDavid A. Andow教授の来日にあわせて「進化生態学的アプローチから薬剤抵抗性管理を考える」と題して4人の演者による特別版で開催します。
日時:2015年1月13日(火)14:00~17:00
(注意! いつもより早く始まります)
場所:中央農研(A地区)第二研究本館 4F会議室 (419室)
http://yahoo.jp/TbSCyx
なお、Andow教授の招聘は、農林水産省委託研究プロジェクト「ゲノム情報を活用した農産物の次世代生産基盤技術の開発」の予算で実施されたものです。
セミナー終了後には、演者を囲んで懇親会を企画しています。参加希望される方は、人数把握のため1月9日昼までに農環研の山中さん(apple(at)affrc.go.jp)まで、ご連絡ください。(@を(at)に換えてあります)
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第60回蟲セミナー「進化生態学的アプローチから薬剤抵抗性管理を考える」
化学農薬に対する抵抗性発達の管理は、古くから害虫防除の一大テーマであるが、ここ10年で、かつてないほど重要度を増してきている。多くの農薬の開発から数十年が過ぎ、主要な殺虫成分の登録が軒並み失効している一方、新薬の開発には、多くのコストと時間がかかるようになっていて、実質的に使用できる有効成分の種類が激減しているのだ。少ない有効成分をどのように組み合わせて、抵抗性発達を可能な限り遅らせることが出来るか、最適な管理技術を構築するフレームワークが求められている。
本セミナーでは、長年、基礎的な生態学理論を実際の抵抗性管理に役立てきた米国ミネソタ大学のDavid A. Andow教授をお招きして、世界的な抵抗性管理の流れをレクチャーしていただくと同時に、鈴木芳人氏、須藤正彬氏、高橋大輔氏らに最近の抵抗性管理に関する理論研究を紹介していただく。
演者1:David A. Andow (ミネソタ大学)
Bt遺伝子組換体の抵抗性管理を中心に薬剤抵抗性管理を考える(Pesticide Resistance Management with a Focus Insect Resistance Management for Bt-GMOs)
Despite over 60 years of experience with the evolution of pesticide resistance, several fundamental controversies remain about managing pesticide resistance. Should pesticide resistance be regulated by the government or be left to private industry? Should resistance be defined only by biological criteria or should it also include economic criteria? While high-dose pesticidal plants have been effectively managed with the high dose/ refuge strategy, most pesticides are non-high dose. What strategies are effective for non-high dose pesticides (rotation of active ingredient (a.i.), reduction/increase of dose, pyramiding several a.i.’s, integrated pest management, something else)? How should pesticide resistance be monitored?
演者2:鈴木芳人 (農研機構フェロー)
殺虫剤抵抗性管理の盲点(Blind spots in insecticide resistance management)
薬剤耐性の発達抑制策として広く受け入れられてきた殺虫剤への依存度低減や複数剤のローテーション散布などは逆効果をもたらす場合がある。シミュレーションモデルを用いて半倍数性と2倍性の害虫における抵抗性発達速度に及ぼす諸要因の複合効果を比較検討し、抵抗性発達のシンプルな原理を踏まえた現実的な抵抗性対策を提案する。
演者3:須藤正彬((独)農業環境技術研究所)
害虫の生活史タイプに基づく薬剤抵抗性管理の最適戦略 (Optimal strategy of pesticide resistance management based on the life history of insects)
殺虫剤抵抗性の発達を遅延させるべく、ローテーションや混用、モザイクといった複数薬剤の併用戦略が提唱・実践されてきた。一方で害虫が生涯に経験する移動分散、交尾、および薬剤暴露のタイミングは、個体群中における抵抗性遺伝子の固定に異なる影響を及ぼし得る。本研究では個体群動態のシミュレーションモデルに基づき、害虫生活史タイプを考慮した、失敗しない抵抗性管理戦略の原則を検討する。
演者4:高橋大輔((独)農業環境技術研究所)
薬剤抵抗性はいつ顕在化するのか?解析的モデルを用いた一般的な近似法(When does a recessive trait prevail? A standard approximation of the outbreak timing using analytical approach)
移入個体の動態や薬剤抵抗性の発達は、しばしば個体群内での頻度動態という形でモデル化されてきた。先行研究では、その個体や遺伝子は集団への侵入可能性の検討が焦点となってきた。しかし、固定に至るタイミングの予測については解析が進んできたとは言い難い。本研究では2階微分までを用いて解析的モデルを近似し、その近似動態から頻度が急激に変化する時刻を表現する指標を提案する。
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中央農研 蟲セミナー係 日本・柴
農環研 山中
問い合わせ先
中央農研 日本(hinomoto(at)affrc.go.jp)(@を(at)に換えてあります)
中央農研・蟲セミナー「進化生態学的アプローチから薬剤抵抗性管理を考える」のご案内
2014/12/15(月)