『野生ミツバチとの遊び方』
トーマス・D・シーリー著、小山重郎訳、192頁
築地書館 2016.5発行 定価:本体2400円+税
目次:まえがき/ハチ狩りとは/ハチ狩りの道具/ハチ狩りのシーズン/ハチの飛翔ルートを確かめる/巣までの距離/ハチ道をたどる/ハチの木を探せ!/ハチの木を奪ってはならない
ミツバチの養蜂が始まる以前には、老木の空洞などに作られた野生ミツバチの巣を探して蜜を採る「ハチ狩り」が行われてきた。この本では、ハチ狩りをスポーツとして楽しみたいと考える著者が、40年余の経験をもとに、その方法を詳しく述べている。それは、花に集まるミツバチを捕らえて、匂いをつけた砂糖蜜を与え、再び蜜を採ろうと仲間を連れて戻ってくるハチに印をつけ、その飛翔方向に餌場を移動させながらハチがいる木にたどりつくというものである。発見された巣やハチミツは採集されず、素晴らしい思い出だけが持ち帰えられる。
著者のシーリー氏は、アメリカ、コーネル大学教授で、ミツバチ行動生態学の世界的権威であり、邦訳書に『ミツバチの生態学』(文一総合出版)、『ミツバチの知恵』(青土社)、『ミツバチの会議』(築地書館)がある。この本ではハチ狩りの方法を述べるだけでなく、その基礎となる「ミツバチはどういう匂いを好むか」、「花の蜜の多い時期にハチ狩りを避けるのはなぜか」、「どのようにして仲間に餌の場所を知らせるのか」、「花や巣などの目標をどのようにして見つけるか」、「どんな形の巣穴が好まれるか」などミツバチの行動学的知見について、各章末尾のコラム「生物学の部屋」の中で詳しく解説している。
そして、最後の章では野生ミツバチの巣を破壊すべきではないことを強調する。アメリカでは、野生ミツバチと養蜂ミツバチは分蜂や女王の交尾行動によって遺伝子が交換されているので、養蜂ミツバチの遺伝的多様性の維持のためにも、野生ミツバチは保全されるべきだという。野生のセイヨウミツバチがいない日本では、これは在来のニホンミツバチの養蜂において考えるべきことであろう。
(農研機構中央農業研究センター 守屋成一)
新刊紹介 野生ミツバチとの遊び方
2016/05/30(月)