- 出版: 東海大学出版会
- ISBN: 4-486-01572-X
- 2005年、B5版、1,342頁、定価32,000円(税別)
水生昆虫と言われる昆虫グループは、彼等の幼虫時代あるいは幼虫と蛹時代を水中で生活し、成虫になって空気中へ出ても、主として水辺で生活する昆虫の総称である。害虫としては、鱗翅目のミズメイガ、双翅目のガガンボ、カ、ブユ、アブ、チョウバエ、ユスリカなどが含まれるが、害虫の天敵として、トンボ目、半翅目のアメンボ、膜翅目の寄生蜂類などがある。さらに、水田のウンカ、ヨコバイ類の天敵であるクモ、カエルなどの被食者として、その増殖に寄与するユスリカ類も水生昆虫に含まれる。
水生昆虫の研究のために不可欠の分類同定には、これまで『日本産水生昆虫検索図説』川合禎次編(1985年: 東海大学出版会刊)があってよく利用されてきたが、このほど20年ぶりに大幅な増補改訂がおこなわれた。執筆者も15人から35人、頁数も3倍以上となり、これまでの幼虫検索に成虫検索も加えられ、内容的にもきわめて充実したものとなっている。
総論では、「水生昆虫とは」、「水への適応」、「水生昆虫研究の史的展望」の各章があり、各論は水生昆虫幼虫の目の検索表からはじまり、カゲロウ目、トンボ目、カワゲラ目、半翅目、ヘビトンボ目、アミメカゲロウ目、トビケラ目、膜翅目、鱗翅目、甲虫目、双翅目の各目の概説のあと、科、属、種に至る検索表が豊富な原図、写真と共に示されている。各目ごと(双翅目では科ごと)に付されている参考文献と巻末の学名及び和名の索引は研究者にとって便利であろう。
水生昆虫は、これまで河川水系の環境評価の指標として注目されてきたが、近年、水田の環境保全機能や生物多様性が評価されるようになり、水田や水路における害虫の天敵としてのトンボ、アメンボ、また天敵の被食者としてのユスリカ、さらに一般的な生き物調査などにあたり、本書の活用場面は大きく拡がるものと思われる。
(仙台市 小山重郎)