第53回 生態学こまば教室のご案内

東京大学 総合文化研究科の工藤達実と申します。

この度、第53回生態学こまば教室を8/6に開催することになりましたので、お知らせいたします。理化学研究所でポスドクをされている森田慶一 博士をお招きし、繁殖戦略の進化が群集に与える影響についての理論研究についてお話しいただきます。ハイブリッド開催ですので、現地参加できない方も積極的にご参加ください。

日時:2025年8月6日(水曜日)15:00 - 16:00
場所:東京大学駒場Ⅰキャンパス 15号館409
開催方法:ハイブリッド開催(対面&オンライン) ※配信URLは後日送付いたします。

こまば教室HP:
https://sites.google.com/site/komabaecoevo/

参加登録フォーム:
https://forms.gle/B3WVRb46YnPXJgvZ8
登録締め切り: 2025年8月5日23:59
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「クジャクのダンス、隣人も見た——繁殖戦略の進化がもたらす共存・絶滅ダイナミクスを、数理モデルで解明する」

森田慶一 博士: 理化学研究所数理創造研究センター

近縁種どうしの共存メカニズムは、長らく「共通資源の奪い合いによる少数派の種の排除」という競争排除則に基づいて説明されてきた。しかし近年、この古典的な理解は刷新されつつあり、「資源の奪い合いを伴わない」代替プロセスとして、繁殖干渉が注目されている。繁殖干渉とは、交配相手の誤認識によって繁殖成功が低下する現象であり、昆虫・哺乳類・鳥類・植物など多様な分類群で確認されている。特に、交雑が生じると、雑種が不稔あるいは低適応度であるため、群集内の正の頻度依存性によって少数派の種が排除されるうることが理論的に示唆されている。そこで、繁殖干渉で在来種と相互作用する外来種の定着は失敗しやすいと予想されるが、実際には定着に成功する例も少なからず存在する。

本研究では、外来植物の移入初期に注目し、定着成功の鍵となる形質として性配分と自殖率に注目した。外来植物の性配分がメス機能に偏ると集団増殖率は下がるものの、余剰の胚に他種の花粉が受粉することで干渉が緩和される可能性がある。また、自殖が進化すれば交雑自体を回避できる。これらの形質の在来種との差異が外来種の定着(つまり、在来種との共存)に与える影響を、数理モデルを用いて調べた。本セミナーでは、結果の生態学的妥当性に加え、実証研究への展開も含めて議論したい。

参考文献:Morita, K.*, Sasaki, A. & Iritani, R. (2025) How can interspecific pollen transfer affect the coevolution and coexistence of two closely related plant species?. Oikos DOI: 10.1002/oik.11133

森田慶一 博士のホームページ:
https://sites.google.com/view/key1morita/

森田さんは、生態学・進化学の若手の理論研究者の交流を目的とした理論進化生態フォーラムを企画しておられます。ご興味のある方はこちらにもご参加ください。

理論進化生態フォーラム HP:
https://sites.google.com/view/theor-eco-evo-forum/

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世話人:工藤 達実 (東京大学D3) 納富 祐典 (東京大学D3) 朝鍋遥 (東京大学D1)
お問い合わせ:工藤 達実
東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 広域システム科学系
〒153-8902 東京都目黒区駒場3-8-1 3号館314
E-mail:
tatsu-cu(at)g.ecc.u-tokyo.ac.jp
@を(at)に変更しています。

工藤達実(行動進化生態こまば教室 世話人)