新刊紹介「診断ハンドブック 緑地・花壇の病害虫」

2025/01/28(火)

書誌名:「診断ハンドブック 緑地・花壇の病害虫」
編著:堀江博道・竹内浩二・近岡一郎・橋本光司
出版日:2025年1月22日
出版社:大誠社
総ページ数:292
ISBN:978-4-86518-249-1 C3645
定価:2,500円 (税別)

 本書は,植物医科学叢書No.9として企画・編集されました.植物医科学叢書シリーズは,植物の生育障害を総合的に診断し,植物の健康を護ることを目標に,専門性を維持しつつ,平易で簡潔な構成と内容にすることを基礎としています.同シリーズの既刊「花木・観賞緑化樹木の病害虫診断図鑑」(2020年)および「花壇・緑地草本植物の病害虫診断図鑑」(2023年)の内容を併せてコンパクトにし,要望に応えた携帯性と利便性を確保したハンドブックとして編集しました.緑地や花壇に植栽される草花・緑化樹木等の生産者,それらを守り支援する樹木医,庭や公園などの造園・緑化管理者や,緑に親しむ愛好家に役立つよう企画され,コンパクトでありながら1,000枚以上のカラー写真が効果的に配置され,見て判断・対処できるよう工夫されています.編者らは,東京都や神奈川県の農業試験場や病害虫防除所などで病害虫対策などに従事し,その間に観察した病害虫の発生や被害の記録を整理し,本書にまとめました.

 害虫編は以下の構成となっています.
第1部 庭木・緑化樹木・草花の主な害虫
第2部 緑地・花壇の土着天敵類
第3部 害虫診断および対処の実践  

 第1部では緑地や花壇の樹木・草花に発生する60種以上の害虫を被害写真や診断に役立つ写真とともに,診断や同定に必要な内容を簡略に記述してあります.第2部では,緑地や花壇でよく見られる,有益な土着天敵40種以上の写真と簡単な解説を掲載しました.身近で見られる天敵を知ることで害虫防除の判断に役立ち,天敵を活用することにも繋がります.第3部では,害虫診断とその防除対策の構築に不可欠な,害虫の種類と見分け方のポイント,発生生態と被害の特徴,対処法などの基礎的・応用的な知見について,編者らによる現地での実態把握と経験を踏まえつつ紹介しました.また,巻末には4種類の索引を付帯し,植物種ごとに発生する害虫を検索することも可能で,広食性害虫の寄主についても調べやすいよう工夫されています.
 編者らの思いは,多くの人が多様な植物を健康に育て,私たちと共存できる豊かな植栽環境を維持していくことにあります.病害虫が発生したからといって,意味の無い植え替えや処分,一律に薬剤散布などを行うのではなく,日常管理を基礎として,病害虫が発生しても被害が生じない程度にコントロールすることが多様な生物と共存する豊かな環境の実現に繋がるものと考えています.本書が,身近な花壇・緑地植物の障害を正しく同定し,病害虫の生態を理解することによって,防除の必要性を自らが判断するための一助となることを願っています.

竹内浩二(紹介書籍編著者、元・東京都農林総合研究センター)